いまさらですが、6月15日(金)午後11:00~午前0:49(※15日深夜)、6月17日(日)午後6:00~7:49(再)、NHKの「BS1スペシャル 激走!富士山一周156キロ~ウルトラトレイル・マウントフジ~」
ご覧になりました?
割と話題になっているようですね。
トレイルランナーの端くれとして、またショートのSTYに参加した自分としても嬉しい限りです。
STYのことを、富士山グルって156km走るやつの半分で・・・なんて説明するんですが、話が早くて助かります。
【第一部】
第一部は有力6選手に注目した構成、第二部は制限時間一杯で走る市民ランナーを中心とした構成。
UTMFの選手と同じトレイルを半分だけしか走らなかった自分にも大変だった天子山塊を、100kmの山や野を走った後で登る大変さは想像がつきません。
それだけに、UTMFに挑戦された選手、完走された選手の素晴らしさ、中でもトップ選手のありえない脚力、心肺能力、下りでの反射神経、持久力、丈夫な内臓、精神力には畏敬の念さえ覚えます。
そんな素晴らしいトレイルランの最高峰の大会ですが、同じトレイルを走ってはいてもトップ選手の走りを目にすることはできません。有力6選手に注目した第一部では、トップ選手を走りながら撮影するという貴重な映像も多く、食い入るように眺めました。カメラマンはさぞかし大変だったでしょう。
サロモンでのキリアンの盟友ジュリアン・ショリエ選手(1位)、ハル・コナー選手(DNF、途中からアダム・キャンベル選手2位)、UTMBにも参戦している横山選手(5位)、ヤマケンこと山本健一選手(3位)、現在の日本一と目される相馬剛選手(DNF)、日本人トレイルランナーのパイオニアの筆頭、石川弘樹選手(DNF)。
UTMBを圧倒的な強さで連覇しているサロモン勢にハル・コナーや日本人トップ選手がどのような戦いを見せたのか、断片的な途中経過とリザルトしか分からなかったので、とても興味がありました。
横山選手の復活には心から拍手を送りたいし、明るく楽しんで、しかもしたたかに走る、大好きなヤマケンの姿も堪能しました。復活途中のヒロキには頑張ってほしいし、禅僧のような孤高な相馬選手の初の100マイルトレイル挑戦にもハラハラした。
【第二部】
また、第二部では、自分と近い年齢、キャリア、走力の選手が関門ギリギリを通過したり、できなかったり、諦めたり・・・。情けない映像も多かったけど、「この人たちも凄いんだぞっ!」って、少し涙ぐみながら共感を持ってみていました。最高齢での完走者、大内選手のお父さんの笑顔も良かったですね。
そんないい番組ではあったのですが、一方で残念な面が2つありありました。
【残念その1】
一つは静岡県の子どもの国から山梨県河口湖にいたる82kmを走る「STY」について、一切触れられなかったこと。
取材でもSTYのピンクのゼッケンが入らないように、写らないように苦慮していました。
自分がSTYに出たから取り上げてほしいと、僻みで言っている訳じゃないですよ。(まぁカメラに入らないように疎まれた寂しさは多少はあるけど)
UTMFはSTYとは比較にならない厳しさだし、本家のUTMBでも、CCC、PTL、TDLなどの付随レースが取り上げられることは稀なので、当然と言えば当然かもしれない。
ただ、82kmという距離はフルマラソン2回以上、UTMFを除けば国内では信越五岳110km、おんたけウルトラ100kmに次ぐ距離、日本選手権ともいえるハセツネ、日本山岳耐久レースの71.5kmを凌ぐハードなレースなのだ。
また、UTMBの参加者が800人、STYが1200人と、半分以上の選手がSTYだった訳でもあるのです。
言わば日本のトレイルランナーのなかでも上位の耐久力がある選手がSTYに挑んでいるのであり、UTMBはさらにそれ以上の高みに挑むものたちなのです。
富士登山に喩えれば、登山口から5合目までがSTY、五合目からさらに上を目指すのがUTMFなのではないかしら。登山口から下にはさらに広い裾野がある。
富士山も裾野があってこその高みなんですけどね。いきなり5合目からじゃ1500mにもならない。
UTMF=山頂だけ紹介して、トレイルランナー=裾野やSTY=5合目を無視しては、UTMFの凄さが伝わらないというか、高みが削られてしまったような気がしてしまった。
75km走ったあとでフレッシュなSTYの選手と並走しているときのUTMFの選手の複雑な気持ち、STYの選手にもの凄い勇気を与えていたという事実、逆にSTY選手から多くの励ましがあったであろうこと。
そんな選手同士の励ましあいや心模様も他のレースでは得がたい、UTMFの感動の一部分だったと思うんだけど・・・
【残念その2】
もう一つの残念は、注目6選手(+1)の7人以外、殆どすべての有力選手、トップ選手が無視されていたこと。
4位の望月選手は1日本海から太平洋まで北・中央・南アルプスの415kmを縦走するというトランスジャパンアルプスレースの覇者。300km、UTMB以上の厳しさで有名なトルデジアンに初挑戦完走という凄い人。
6位の山屋選手は国内主要レースで上位に食い込む実力者。どちらも「完全に」無視されました。
7位の奥宮選手は日本山岳耐久レースで何年にも渡り準優勝を重ねてきたMr.ハセツネ。好敵手の相馬選手とのデッドヒートぶりを知らないトレイルランナーはいないでしょう。彼は「その他の選手」として紹介されてました。
結局10位になったけど、途中まで日本人一位だった武藤選手は「抜かれた選手」
DNFとは言え奥久慈1位、キタタン準優勝の平澤選手に至っては「格下の選手」という扱いです。
他にもリザルトの通りの選手について、ジュリアン・ショリエ、ハル・コナー、アダム・キャンベル、相馬選手、石川選手、横山選手、山本選手以外、誰一人、名前すら言われませんでした。
6選手への注目=他の有力選手の無視ではないと思うのですが・・・。
ここでも富士山が削られている感じがしました。 (T_T)
結局、五合目どころか、九合五勺くらいまでは捨て去ってしまい、たかだか百メールくらいの高みにされてしまったような気分です。