2週間ほど前、書店のランニングコーナーで「BORN TO RUN」(クリストファー・マクドゥーガル、NHK出版)という本を見かけた。
中をチラ見すると、タラウマラ族とかカルロス・カスタネダという名前、高級ランニングシューズを履いたランナーの膝や足の故障の話などが出てくる。ナイキの創始者ビル・バウワーマンの名前や初期のベストセラーシューズ「コルテッツ」が取り入れたウェッジソールの話なども。しかし、コルテッツが「コルテス」のことだったとは! 迂闊だった。(知っていたら愛用しなかったかもという意味)
スペイン語発音ではHを省くため「タラ"ウ"マラ族」となるが、我々の世代だと「タラ"フ"マラ」族という方がピンとくる。
80年代初頭結成の「タラフマラ劇場」(改め「パパ・タラフマラ」)、元はといえばアントナン・アルトーによる「タラフマラ」
あるいは真木悠介の名前で三田宗介が書いた「気流の鳴る音」(筑摩書房、1977年)でのカルロス・カスタネダ論考。
80年に大学生でニュー・アカに染まっていた自分には、あるいはその数年前高校2年の時にヘビアイに凝って、体育履きで「ナイキ・レザー・コルテッツ」を履いていた自分には、ソケイ部あるいは延髄の後ろあたりをむんずと鷲づかみにされるような同時代の響きがある。
早速購入し、そのまま眠る間も惜しんで読みふけった。
- 人跡稀な荒地をどこまでも走る民族「タラウマラ族」とは?
- ナイキをはじめとするランニング・シューズは、高級なものほど怪我や故障が多いのはなぜ?
- 人間はなぜ直立二足歩行をしたのか? なぜ毛が少ないのか?
- 裸足に近い格好で走るメキシコのタラウマラ族と、エリートランナーはどちらが速いのか?
文化人類学、身体・スポーツ科学、トレイルランニングやエンデュランスレース、自分にとっても関心がある深いテーマがいくつも絡みつつも、アメリカ人特有のカジュアルな筆致で進められていく。
中田力氏の「脳のなかの水分子―意識が創られるとき」(紀伊国屋書店)以来、久々にエキサイティングな本だった。読み終わってすぐ、ビブラム社の5本足シューズを探しにショップに行った。
既にランナーの方にも、明日からのランナーにも、是非ご一読をお勧めしたい。
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